ウォータースライダーのあるホテル2

仕事じゃなくラブホに行くKA

「部屋にスライダー……なんか前見たことある」
ラブホって予約できるんだなって連れられて入った部屋で思った。予約したってことはKKはわざとこの部屋を選んだんだろう。なんでわざわざとも思わなくもないけど次のKKの言葉で思い出した。
「ここじゃねえが前に依頼で祓って回ったホテルにもあったろ」
「……ああ。子供扱いされたとこ」
マレビトが発生する前に穢れを祓って回るのも仕事のひとつだ。ラブホテルなんて愛憎渦巻いていて穢れが無い方が珍しいと教えられたのもその頃だったっけ。
「そうだったか?」
「滑りたいなんて言ってないのに滑れって勧めてきたじゃん」
「あー。そんなこともあったな。お前がラブホだからってそわそわしてたから気を抜いてやろうと思ったんだよ」
「ソワソワなんて」

してないとは多分言えなかったと思う。少なくともこういう関係になる前から恋愛感情なのかどうかはともかくKKが好きではあった。明確ではなかったけど多少なりとも意識している相手と仕事とはいえラブホテルへなんて普通に平常心でいるのは難しかっただろうし。
「行ったこと無かったんだもんなあ?」
「うっ、それはそうだけど」
そもそも経験がなかった。長く付き合うような相手も余裕も無くて、かといってそれだけを目的にするのも違うと思って。友達から何度か紹介されてもやっぱり深い付き合いにはならなかった。だから縁の無い場所だったんだ。
「滑るんならガウン着ろよ」
「……全然忘れてないよね?わざと?」
「見て思い出したんだよ。風呂場は下だ。滑ってそのまま風呂入っちまえよ」
「……ここで脱げってこと?」
「……あー…風呂貯めてきてやる」
KKはそそくさと階段を下りていった。
「勝手に滑るの決定してるし」
今更恥ずかしがるような仲ではないとは思うけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。さっさとガウンに着替えてしまおう。そしてお望み通りスライダーを滑ってあげよう。
本気で滑りたいと思われているわけでもないのは解るけど、わざわざ予約を取って連れて来るくらいなんだから喜べば上々くらいには思っているんだろうから。
「うーん、流石に二人で滑るのは危ないかな」